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The Wizard スウィート・ロード

アメリカ映画 (1989)

ファミコン用アクションゲームのごく初期の時代の映画。現在で、この種のゲームは、当時と比べると極限にまで発達し、①ゲーム依存症という社会問題を生むと同時に、②eスポーツという新たな局面が開かれようとしている。この映画は、どちらかといえば②に近い。双子の妹(あるいは姉)ジェニファーが目の前で溺れ死ぬのを見た “泳げない” ジミーは、以来PTSDとなり、心を閉ざし突飛な行動をくり返す。ジミーの母は、もう一人の映画の主役であるコーリーの父サムと離婚し、ジミーを連れて新しい夫と一緒に暮らしている。しかし、その義父は、ジミーが自分の子供でないため、愛情のかけらも持ち合わせおらず、ジミーを自閉症の施設に放り込んでしまう。異母弟のことが心配なコーリーは、ジミーを施設から救い出し、いつもジミーが口にする「カリフォルニア」に連れて行こうとする。コーリーとジミーは、途中でネバダ州のリノ(Reno)〔直線距離で約650キロ西北西〕の “家” に帰ろうとしていたヘイリーと出会う。ジミーのビデオ・ゲームに対する卓越した “wizard(才能)” に着目したヘイリーは、ゲームで旅費を稼ぐとともに、ロスでビデオ・ゲーム大会に出ることを勧める。これまで、積み木をするか、逃げ出すことしかしなかったジミーが、ゲームに熱中する。しかし、それは、ゲーム依存症という意味ではなく、PTSDの新たな逃避先としての熱中だった。ジミーの心の傷の本質は、彼が決して手放さないランチ・ボックスにあったのだが、そのことは、母も、ジミーが2年間通ったセラピストも見過ごしていた。ヘイリーとコーリーは、リノでジミーの腕を磨かせてから、大会のあるロスのユニバーサル・スタジオ・ハリウッドに向かう〔直線距離で615キロ南南東〕。ジミーは、数々の妨害に遭いながら大会で優勝するが、その帰り、クロード・ベルが作ったブロントサウルスの前を通りかかった時〔直線距離で145キロ東南東〕、ジミーが異様な反応を示す。そこは、ジミーがPTSDから抜け出すことできる世界で唯一の場所だった。

9歳のジミーは、この2年間、異常な行動をくり返してきた。そもそも、何も話さない。話したとしても、「カリフォルニア」と言って、フラリどこかに行ってしまうだけ。ジミーは妻の連れ子なので、そこに何の愛情も感じない夫は、専門の病院に閉じ込めて自分に迷惑がかからないようにする。それを伝え聞いたジミーの腹違いの兄、13歳のコーリーは、父サムや兄ニックに内緒で家を飛び出し、病院からジミーを連れ出す。どこと言って行き先があるわけではないが、ジミーが「カリフォルニア」と言うので、バスでロスに行こうとするが、持ち合わせの僅かなお金ではユタ州の州境まですら行けない。しかし、切符売り場で話をする間、ジョーをゲーム機の前に立たせたことで、その卓越したゲーム能力に気付く。そこで偶然に鉢合わせしたのが、ネバダ州のリノの家に帰ろうとしていた13歳の少女ヘイリー。ジョーの才能を知ったヘイリーは、ロスで開催されるビデオ・ゲーム大会に出るよう、コーリーを説得する。行き先は、まず、回り道になるが、自分の家があるリノ。そこで腕を磨いてロスに乗り込むという算段だ。ただ、リノまでの道は遠く、3人はヒッチハイクと野宿を続け、ゲーム機のある所ではジョーを対戦させて僅かなお金を稼ぎ旅を続ける。ただ、ジョーには、両親が雇った家出人捜査専門の私立探偵が後を追い、コーリーには、父サムとニックが後を追っていた。何とかリノに着いた3人は、ヘイリーがカジノで稼いだお金を使って、ジョーに多様なゲーム機で実地訓練をさせる。私立探偵に捕まりそうになるが、ヘイリーの父(トラック野郎)の友達の助けで防ぐことができた。そして、遂に、大会の日。3人は、大会の行われるユニバーサル・スタジオに、ぎりぎりセーフで辿り着き、ジョーは予選を突破、最終決戦の3人のうちの1人になる。しかし、決勝までの15分の間に会場の外に出たことで、私立探偵に追われ、危うく決勝を逃す寸前に。それでも何とか、決勝に出たジョーは見事優勝する。ロスからの帰り道。ジョーは、路傍にある巨大な恐竜の模型を見て、急に騒ぎ出す。そこは、ジョーの双子の妹ジェニファーが生きていた頃、そして、今は別の男の妻になってしまった母もサムと一緒にいた頃、幸せ一杯に訪れた記念の場所だった。ジョーは、ジェニファーに対する思い出の品を全部そこに残してくることで、それまで重くのしかかって “軛(くびき)” からようやく解放される。

ルーク・エドワーズ(Luke Edwards)は、TVの子役からスタートするが、映画への出演はこれが初めて。役柄上台詞はゼロに等しいが、ユニークな “チビ” として目立った存在になっている。フレッド・サベージ(Fred Savage)は1988年から1993年にかけて6年に渡って主役を務めたTVシリーズ『The Wonder Years(素晴らしき日々)』で不動の人気を獲得したコメディ系の子役。この映画でも、知名度から、映画のタイトルの前に1人だけ名前が表示される。ただし、映画で一番目立つのは、ヘイリー役のジェニー・ルイス(Jenny Lewis)。映画の撮影は、1989年6月5日-7月25日、公開は同年の12月15日と、映画としては信じられないほどの短時間編集。撮影時の年齢は、ジミー役のルークが9歳、コーリー役のフレッドが12-13歳の移行期、ヘイリー役ジェニーが13歳、コーリーの兄のニック役で当時大人気の青年俳優クリスチャン・スレーターが20歳。


あらすじ


映画のオープニング・クレジットを背景に、荒地の中の一本道を1人の少年が歩いてくる姿が望遠で捉えられる。左手には、黄色のランチ・ボックスを持っている。クレジットが終わると、顔がクローズアップされる。9歳の少年ジミーだ(1枚目の写真)やがて、道路に沿って1機のセスナが飛んできて、無線で、「待て、待て、見つけたぞ! 母親は当たってた。ビュート旧道の南約3マイルだ」と報告する。それを受けたジープが現場に急行する。ジープは、少年を見つけると道路脇に停まり、セスナは去って行く(2枚目の写真、矢印は彼が絶対に手放さないランチ・ボックス)。警官は、少し先でジープを停めると、ジミーの行く手を遮り、「なあ、おい、坊や。どこに行く気なんだ?」と尋ねる。ジミーは、「カルフォルニア」とだけ一言。そこに、警察無線が入り、「その子を母親の所に連れていって。再婚してるの。クリスティーン・ベイトマン。町の南に住んでるわ」と指示される。
  
  
  


場面は変わり、ジミーは、施設室内の遊び場で、レゴで何かを作っている(1枚目の写真、矢印はランチ・ボックス)。施設を管理する女性は、ジミーをガラス越しに見ている母に、「コーリーかニックか実の父親に会いに行ったのでは?」と、仮説を投げかける。返事がないので、夫が「クリスティーン」と強く呼ぶ。母親は振り向き、「失礼、何か言いました?」と訊き返す。自分の妻のいい加減さに呆れた夫は、「なあ、あの子は、ランチ・ボックスだけを持って行った。何が入ってる? どこに行くんだ? ダウンタウンだろうが、キャニオンだろうが、川だろうが、所構わずだ」。「川には行かないわ。川の近くには絶対行かない」。「そうか。川には近づかん。だが、俺が言いたいのは、あの子は、好きな時にフラっといなくなる。真夜中だろうが、コーンフロスティを食べてる途中だろうが、衝動に駆られて放浪におでかけだ。ご近所には非常態勢をお願いし、警察には時間外労働をさせてる」。この男は、クリスティーンの夫だが、ジミーの実父ではないので、ジミーに対し何の愛情も抱いていない。妻がジミーの親権を持っているので、仕方なく面倒をみているだけだ。こうしたジミーに対する非難の言葉に、ムッとした管理者は、「ベイトマンさん、ジミーは重いトラウマを抱えた子供です。ああして、積み重ねることに病的な執着があるのです。何かを作ることで、自己表現の道を探していると思うのですが」(1枚目の写真)と、これまた寝ぼけたことを言う。母は、「でも、あなたには分からない」と、見下すように言う。結局、ここで悪いのは、3人全員。①母は、ジミーのトラウマの原因を知っているのに、それを「カリフォルニア」やランチ・ボックスと結びつけることができないでいる。しかも、ロクでもない夫と結婚したのに、ジミーの親権を実父から取り上げた。②施設の管理者は、「カリフォルニア」という言葉と、ランチ・ボックスがすべての鍵であることに気付かず、積み木〔それ自体は無意味/強いて言えばストレスの発散法〕に意味があると勘違いしている。2年もジミーの “治療” をしている専門家としては無能の極み。③義父はジミーにうんざりしているだけ。その夫は、「いいかね、我々は、あの子を、ここに2年間預けている。そろそろ代替案を考える時がきたようだ」と言い(2枚目の写真、左が②、右が③)、「医療機関に入れようと思っている」と、この施設が役立たずだと宣言する。
  
  

一方、実父の家。父は、いつものようなバーガーやピザではなく、自分で料理を作り、2人の息子を恐怖に陥れている〔それほど不味い〕。弟の13歳のコーリーが、「僕ら、昨日、ジミーを見たよ、パパ」と報告する。「そうか? どうだった?」。「あの両親、病院に入れるとか言ってた」。「クリスティーンの決定だ。親権は彼女にある。知ってるだろ」。その後、コーリーの心配にも係わらず、父と兄のニックは話題を逸らす。そこで、コーリーは、「病院に入れられちゃうんだよ、ニック」と兄にも問題提起するが、ニックは、「ジェニファーの時から、ずっとああだ」としか言わない(1枚目の写真)〔ジェニファーはジョーの双子の妹か姉。ジョーの目の前で溺れて死んだ〕。父が、わざと話を逸らし続けるので、怒ったコーリーは、「パパ、僕の話、聞いてるの? 平気なの? ジミーが病院に入れられても構わないの?」と質問をぶつける(2枚目の写真)。「コーリー」。「そうか、分かったよ。ジミーはたかが、腹違いの弟。どうなっても構わないんだ」と、怒って言うと、食事をパスして出て行く。ニックも出て行き、後に残った父が自分に料理をスプーンで口に入れると、あまりの不味さに吐きそうになる。
  
  

コーリーは、ジミーの入院先を書いたメモを手に持っている。次のシーンで、コーリーはグリーンリヴァー(Greenriver)〔最初にジミーが歩いていた道からそれほど遠くないユタ州南部の小さな町〕にある病院に行く。右肩にリュックを掛け、左手でスケボーを持っている。専用の施設らしく、病院は2階建てて普通の家を少し大きくした程度。玄関から入り、3つ目の部屋にジミーがいた。専用の勉強机もある広い部屋で、ジミーはTVを観ている。コーリーは、その前に膝を付いてイスに座ったジミーと目の高さを合わせると、「ジミー」と声をかける。「ちょっと旅に出よう」(1枚目の写真)「お前と僕だけでだ。どう思う?」。「カリフォルニア?」(2枚目の写真)。「ああ」。そう言うと、自分のかぶっていたキャップ(ウィード造園と書いてある)を、ジミーの頭にかぶせ、「そうだ、カリフォルニアだ。行くぞ」と、手を取る。2人は、病院にお菓子を届けにきたバンまで行くと、コーリーが後部扉を開け、「チョコは好きか?」と訊く(3枚目の写真、切れて映っていないが、右手に黄色のランチ・ボックスを持っている)。「うん」。「よし、入れ」。こうして、ジミーは病院から忽然と消える。
  
  
  

父とニックが病院の前の駐車場に着と、待っていた警官から、「いいかね、ウッズさん。我々には、家出人を捜すような人手はない。たとえ、うち1人が障害児でもだ」と言われる。「障害児じゃない」。「何であろうとだ」。病院の院長室では、院長の前にベイトマン夫妻が座り、左端にコーリーとジミーの父親が立っている(1枚目の写真)。ベイトマンは、「事態をはっきりさせておきたい。ウッズ、あんたの息子コーリーが、ジミーを連れ出したんだ」と言う。「2人とも、俺の息子だ」。「そうだが、うち1人には、私に法的責任があるから…」。「こんなところで、なんでぐだぐだ話してる」。「最後まで話を聞け。私にはあの子に対し義務がある〔愛はない〕。何としてでも見つけ出し、ここに治療のため連れ戻さねばならん」。ここで、元妻が口を出す。「捜し出してくれる人を雇ったの。パットナムさんよ」。パットナムは、家出人の捜索が専門と紹介される。父:「コーリーはどうなる?」。義父:「コーリーは、好きで家出したんだろ? 連れ戻したら、かえって良くないんじゃないのか?」。その白々しい言い方に呆れた父は、無言で出て行く。ニックは、「いいか、ベイトマン、これまで俺は、お前さんが嫌な奴だとは思ってたが、これほどひどいとは知らんかった」と捨て台詞を残して、父の後を追う。コーリーとジミーを捜しに行こうとピックアップ・トラックに向かう2人の後を、パットナムが追ってくる。そして、「俺は、子供を連れ戻すことでお金が入る」(2枚目の写真)「誰かが連れ戻したら金にならん。言いたいことは分かるな〔You catch my drift〕? 俺の足を引っ張るんじゃないぞ〔not be getting in my way〕。いいな?」と警告する。
  
  

コーリーは、配達のために最初にバンが停まった所で降りようとする。そして、ジミーの口についたチョコに驚く。「お前、そんなにガツガツ食べたのか〔make such a pig out of yourself〕?」(1枚目の写真)。バンから出たコーリーは、地図を見ようと、「動くな」と命じるが、ジミーはお構いなしに道路に向かって歩いていく。コーリーが気付いた時は、数10メートル先。困ったものだ。2人は一緒に道沿いに進む。道路が下りの箇所は、コーリーのスケボーにジミーを乗せる(2枚目の写真)。しかし、水平になると、歩かざるをえない(3枚目の写真)。「カップケーキいくつ食べた? トゥインキー〔クリーム入りのスポンジケーキ〕、たくさん食べたよな。サンタ〔Ho Ho man〕になった気分だ。お前はどうだ?」。2人は、ゴブリンの谷という枯谷の奇岩の下で焚き火をして一夜を過ごす。
  
  
  

翌日、2人は、ヒッチハイクで車に乗せてもらい、バス乗り場のある町に着く(1枚目の写真)。コーリーは、カリフォルニアまでバスで行こうと、切符売り場のある建物に入る。そこには、バス待ちの時間を潰すために、ゲーム機が2台置いてある。コーリーは、マシンにコインを入れ、切符を買いにいく間、ジミーにゲームをさせる。ジミーは、初めての体験に、真剣な顔をして取り組む(2枚目の写真)。コーリーが、切符売り場で、「カリフォルニアまで2枚、お願い」と言うと、「君は、どこか考えてる行き先があるのか? それとも、州境で放り出されたいのか?」と訊かれる。「ロスならどうかな?」。「226ドルだ〔当時の33000円弱/現在の約37000円〕。「27.30ドル〔4000円〕しかないんだ。どこまで行ける?」。「どこにも。州境のセント・ジョージでも34ドルだ」。その時、外を見たコーリーは、パトカーに気付く。そこで、隠れようとジミーにゲームを止めさせるが、ゲームの面を見て、「50000? 『ダブルドラゴン〔テクノスジャパン/双截龍〕』(1987)で50000も?」と驚く(3枚目の写真)。このバスの待合所には、1人の少女がバスを待っていた。そして、コーリーがパトカーを避けているのを見届けると、コーリーの後を追って行く。そこは、倉庫のような場所だった。コーリーの声が聞こえる。「どうやったんだ? 5分しかプレイしてないんだぞ。いったいどうやったら 『ダブルドラゴン』で50000も取れるんだ? 僕なんか 一度もない。どうやったんだ?」。そこに、少女が声をかける。「あたし、ヘイリーよ。ここで何してるか言わないと、叫ぶわよ」。「静かに叫べない?」。「あたしのこと、バカだと思ってんの? ポリ公から逃げたでしょ。で、この子は?」。「無口〔shy〕なだけだよ」。「頭が変〔Shy a few bricks〕なんじゃないの?」。「違うよ。さっき、『ダブルドラゴン』を ぶちかましたトコ」。ヘイリーは全然信じない。そこで、コーリーは賭けようと言い出す。「いくら?」。「6ドル70セント」。「持ってない」。「構わないよ。君は、バスの切符を持ってる。払い戻せばいい」。ここで、4人のいる場所なのだが、グリーンリヴァーから70号線を西に行ったシピオ〔Scipio〕か、そのすぐ南ホールデン〔Holden〕の可能性が最も高い〔グリーンリヴァーの西約170キロ〕。というのは、この2つの町から15号線を南に下るとセント・ジョージ。その先に、ネバダ州のラスベガスがあり、そのまま行けばロスだからだ。さらに、ヘイリーの行き先は、そことは全く違うネバダ州のリノ〔Reno〕だが、シピオ~ホールデンから50号線を西に行けばリノに着く〔その先は、サクラメントを経てサンフランシスコ〕。ロスとリノの両方にバスの直行便で行けるのは、この2つの町しかない。

  
  

ヘイリーが先にプレイし、25200点で終わる。次にジミーが開始、その素早い動きを見て、ヘイリーは、「この子、どうかしてるんじゃない」と半分文句。コーリーがバスの切符を奪って窓口でセント・ジョージ行きの2枚の切符に変えようとすると、「ペテンにかけたわね」。「違う。賭けに勝ったんだ」。「返しなさいよ」と揉み合いになるが、その間にリノ行きのバスが出てしまう。3人は、バスの待合所の向かいにあるカフェに入る。そこでもジミーはゲーム機の前に座り、『ニンジャガイデン〔テクモ/忍者龍剣伝〕』(1988)に熱中している。ヘイリーは、その勘の鋭さに驚き、「この子、達人〔wizard〕だわ」と評価を変える。「それがどうしたんだ?」。「いい考えがある。彼が、私に勝てるんなら、他のビデオゲームマニアにだって勝てる」(2枚目の写真)「小銭が稼げるわ」。「そんなの良くないよ」。「天性よ。天才だわ。この子、いとも簡単にやってる〔He picks it up like lint〕。なぜ、カリフォルニアに連れてかないの?」と言うと、ヘイリーは立ち上がり、店に置いてあった雑誌をめくりながら、「ジミーには病院なんて不要だって証明したいんでしょ」と言い、「これに勝ったら、病院になんか戻すと思う?」と雑誌の該当ページを広げてテーブルの上に置く。そこには、ロスで開催されるビデオ・ゲーム大会の優勝金が5万ドル〔1989年6-7月の平均レート換算で725万円/現在の約820万円/参加するための旅費を考えると、思ったより少額〕と書かれている(3枚目の写真)。最初、コーリーは反対するが、ヘイリーは、「突拍子もないから? ばかげてるから? 27ドルしか持たずにカリフォルニアに行こうとしたあんたはどうなの? 彼のこと信じてないんでしょ?」と強く主張する。「君こそ何でそんなに?」。「商売の取引よ。私が、あんたたちをカリフォルニアまで連れてって勝たせてあげたら、賞金は山分けね」。
  
  
  

パットナムの悪辣ぶりを示す最初のシーン。パットナムが、ある町のカフェに入り、レジ係に2人の子供の写真を見せていると、道路の向かい側に、2人の実父サムと長男ニックのピックアップが停まるのが見える。パットナムはナイフを持ってピックアップに近づき、道路側の後輪をパンクさせ、次に前輪をパンクさせる(1枚目の写真、右の矢印はパンクした後輪のタイヤ、左の矢印はまさに穴を開けているところ)。その凄まじい音でサムが飛び出てくる。パットナムは、「警告したろ。生活がかかってるんだ」と、勝手な言い分を口にして逃げる。サムは、荷台から大型のスコップを取り出すと、道路の反対側に停めてあったパットナムの車のヘッドライトなどを破壊すると、次には運転席横のサイドミラーを叩き壊す(2枚目の写真、矢印はサイドミラー)。しかし、いくら壊れても走れるだけパットナムの方が有利。パンクしたタイヤは交換が必要だ。
  
  

ヘイリーは、牛をいっぱい乗せた車に2人を便乗させ、金勘定をしている。「あたしが、この道のこと知り尽くしてて〔know…like the back of my hands〕、あんた幸運ね。パパはトラック野郎なの」。「それで?」。「リノとカンザスシティ〔ミズーリ州〕を州1回走ってる〔実走行距離は約2500キロ/東京~北九州間で約1000キロ〕。あたしたちリノに住んでるの。世界一大きな “小さな街” よ」〔リノは人口約25万。ネバダ州ではラスベガスに次ぐ都市で、カジノ・シティとしても名高い〕。コーリーは、ヘイリーがおおっぴらにお金を数えているので、家畜のトラックの運転手のことが心配になり、「この人たち大丈夫かな?」と訊く(1枚目の写真)。「心配ないって。トラック野郎には詳しいの」〔家畜の運搬をしているだけなので、長距離トラックの運転手ではない〕「彼らには倫理規定〔code〕があるの」。話はリノの家にも及び、「あたしたち、とっても素敵なおうちに住んでる」とも話す。「ママはどこ?」。「別れたわ。ショーガールだったの」。そして、「お金を一ヶ所にプールしておきましょ。いくら残ってる?」と訊く。「21ドル」。「バスの払い戻しが87ドル」。そのお金に目をつけた運転手が、家畜運搬車を道路脇に停める。そして、2人がかりでお金を奪おうとする。先に捕まったヘイリーからお金を受け取ったコ-リーは6頭の牛の間を逃げまどうが、外のヘイリーに渡そうとして、もう一人に奪われる。有り金すべて奪われ、路上に放置されたコーリーは、「倫理規定だって?」と、ヘイリーを皮肉る(3枚目の写真)。ヘイリーには、何も言えない。
  
  

3人は、通りがかったピックアップに乗せてもらい、近くの町に送ってもらう。「ここ、どこなんだ?」。「それがどうしたの? あたしたち一文なしよ」。「そうか? 君が言ったんだぞ! トラック野郎はみんな友だちだって。何が倫理規定だ」。「ここまで連れてきたでしょ」。「どこかも、分からないじゃないか!」。「ちょっとは信じてよ」。「やめてくれよ、ヘイリー。一銭もないんだぞ。怖くないんか?」。「怖いもんですか!」。そう言うと、「あんたが持ってる4ドル出して」と、意外なことを要求すする。コーリーがランチのお釣の4ドルを、パンツの中に隠したのを見ていて、それはさっき奪われなかったと知っていたのだ。コーリーは、「個人のことに突っ込むなんて、ひどい奴だ」とブツブツ。ヘイリーは、ゲーム機のありそうな店に入ると、「カモ〔sucker〕になりそうなバカ〔dumb〕を見つけないと」と言い、「あんたがやるにはズレ過ぎてるから、あたしがやるわ」と手を上げるが、コーリーは、「待てよ。僕の4ドルだ。いいか、よく見てろ。お手本を見せてやる」と言い、4ドルをむしり取ると、ゲーム機の前にいる中年の2人組に寄って行く。コーリーは、画面を見て、「なかなかいいじゃない」と褒める。「ある程度 スキルもあるんだ」。「ある程度? 何が言いたい?」。「僕は、ど下手。だけど、そこにいる弟なら、あんたらはボロ負け」(1枚目の写真)。ヘイリーは、ジミーのキャップを上げて、如何に幼いかを見せる(2枚目の写真)。当然、相手は笑い出す。その後、3人は道路を歩いている。コーリーは、「お前は怪物だな、ジミー。こてんぱんにやっつけた」と褒める。ヘイリー:「彼を見て。笑ってるわ」〔ジミーが初めて感情を表に出した〕。「お前、これが好きなんだな。これなら行けるぞ、ジミー」。「もうすぐ暗くなる。いい考えがあるわ」。ヘイリーは、3人を車の投棄場に連れて行く。ヘイリーは大型のトラックを選び、その屋根付き荷台の中に3人分の寝床を作る。「パパと一緒に、こんな風にしてよく泊まったわ」(3枚目の写真)。それは、本当だろうが、コーリーから「なら、友だちはできないね?」と訊かれ、「山ほどいるわ」と嘘をつく。次のシーンは、日中で、3人は大きな湖を望む展望台にいる。ホールデンからリノに行く50号線の途中で、大きな湖はサビー湖しかない〔距離は、実走行距離で約100キロ。リノは、まだまだ遥か先だ〕。この時、ヘイリーが、「47ドル12セントある。リノに着く頃には、2倍か3倍になってるわ」と言うので、4ドルからかなり稼いだことが分かる。その後、3人は、展望台に寄ったバイク族のグループに乗せてもらって距離を稼ぐ。
  
  
  

そのあとも、3人はいろいろと乗り継ぎ、どこかの町に着く。そこで、3人の年長の不良グループと、ゲーム機で競う。ジミーが、『F-1ドリーム〔カプコン〕』(1988)で47万点に達すると、3人の1人が、「このガキ、サイボーグか?」と言い出す。コーリーが、生意気に、「悪いな、イボ顔、いい勉強じゃん」と言ったので、「イボ顔とは何だ、このヘナちょこ」と反撥を買う(1枚目の写真)。この場合は、店の主人が3人を追い出してくれたので問題は起きなかったが、コーリーが図に乗ってきていることは確か。その直後、店でゲームを見ていた少年が、「そいつは巧いけど、ルーカスには勝てないぞ」と言い出す。その結果、3人はルーカスに会いに行く。ルーカスと、その取り巻きは、コーリーでなくジミーが “達人” だと知って笑う(2枚目の写真、矢印がルーカス)。ヘイリーは、「おばかさん、参考までに言っとくと、彼は ロスのビデオ・ゲーム大会に出るつもりよ」と自慢する。ルーカスは、「じゃあ、腕を見せてもらおうじゃないか」というと、所有する97本のゲーム・ソフトを見せ、「好きなのを選べ」と言う。これには、ヘイリーもたじたじとなる。ルーカスは、発売されたばかりのパワーグローブ(1989)を取り出すと、『ラッド・レーサー〔ハイウェイスター、スクウェア〕』(1987)を起動させる。腕で操作するなど見たことのないコーリーとヘイリーは困ってしまう。ルーカスが、「俺は、パワーグローブが好きだ」と言うと、コーリーは、なぜか、「そうかよ、じゃあ、そのパワーグローブ、彼女には近づけるなよ」と、ヘイリーの肩に腕を回す。これは、コーリーのヘイリーに対する “愛情表現” とも受け取られかねない態度だ。それを見たジミーは、悲しそうな顔になる(3枚目の写真)。そして、コーリーが、「さあ、ジミー、ぎゃふんとさせてやれ」とパワーグローブで闘うよう唆(そそのか)すが、その言葉を無視して出て行ってしまう。
  
  
  

3人は、その町の外れにある仮設の小屋で一夜を明かす。コーリーが目を覚ますとジミーがいない。急いで外に捜しに行くと、彼は木の柵の中で ポプコーンの紙箱を逆さまにして積んでいる。以前のロゴと同じだ。せっかくビデオ・ゲームで “殻” が破れかけたのに、元に戻ってしまった。鈍感なコーリーは、「それ何なの?」とヘイリーに訊かれ、「分かんない。箱を積んでる」(1枚目の写真)。そう言うと、ジミーが積んだ箱の半分を手で叩き落す。「てことは、ちっとも良くなってないんだ」。そして、ジミーに、「いいか、お前は、昨日負けた。1回だけ、1人だけだ」と声をかけるが、ジミーは無視して箱を積み始める。コーリーが、「聞いてるのか?」と怒鳴っても、反応はゼロ。コーリーは、ふて腐れて向こうに行ってしまい、代わりにヘイリーが寄って来る。彼女が「ジミー」と声をかけて手を取ろうとすると、彼はそれを嫌がって避ける。それは、“無視はしたが避けなかった” コーリーとは違った反応だった。それで、ヘイリーは悟る。「コーリー、負けたからじゃない。あたしのせいよ。仕方ないわ。彼、やきもちを焼いたの」(2枚目の写真)。「やきもち。君にか?」。「もう、コーリーったら、何て鈍感なの〔so thick〕! 彼にとって、あんたは全てなの。それが分からないの?」。そして、あくまでも鈍感なコーリーに、昨日、ルーカスの前で、“ヘイリーがコーリーにとって特別な存在” であるかのように振舞った、と指摘する。コーリーは、ただの作戦だったと言い訳するが、ヘイリーは、「彼が、これ以上 情緒不安定〔basket case〕になっても、責任なんか負えないわ」とコーリーの不用意発言に釘を刺す。その時、昨日の不良達が車でやってくる。3人は逃げるがすぐに捕まる。そして、昨日の20ドルを返せと迫られる。不良の1人は、ジミーのランチ・ボックスを無理矢理奪って開けるが、中にはお金など入っていない。コーリーは。ポケットから20ドルを渡し(3枚目の写真、黄色の矢印は20ドル、赤の矢印はジミーのランチ・ボックスの中身)、さらに、利息〔interest〕分と、ジミーのキャップまで奪われる。
  
  
  

コーリーが、ジミーのランチ・ボックスの中身を見たのは、これが初めてだった(1枚目の写真)。一番上に載っていたのは、ジミーとジェニファーとのツーショットの写真(2枚目の写真)。コーリーは、「ジェニファーは、ジミーの双子の妹なんだ。ジミーと彼女は、川の近くに降りて行き、ジェニァーが落ちてしまった。ジミーは泳げなかったから、何もできなかった。変なのは、ジェニファーも全然流されなかった。だから、ジミーの目の前、数フィート先で溺れて死んだんだ。それは、ジミーには衝撃だった。ニックにとっても」。「ニックって?」。「僕の兄貴だ。クリスティーンから2人を見ているように頼まれたんだ。でも、ニックとクリスティーンはそりが合わなくてね。クリスティーンは、パパの2人目の奥さんで、ジミーとジェニファーは、腹違いの弟と妹。でも、クリスティーンは、そんな見方はしてなかった」(3枚目の写真)「ジェニファーが死んだ後、一家はバラバラさ」。このシーンで、なぜ、クリスティーンが離婚して、ジミーの親権を取ったのかは分かるし、ジミーが未だにジェニファーを大事に思っていることは分かるが、ランチ・ボックスを始終持ち歩いている真の理由はまだ分からない。
  
  
  

コーリーは、ジミーがランチ・ボックスの蓋を閉じたのを見届けると、急に立ち上がる。そして、ヘイリーが、「どこ行くの?」と訊くのを無視し、リュックを肩にかけ、スケボーを右手で持つと、左手でジミーの右手をつかんで建物から出て行く。「電話を探してパパに電話する」。「やめるの? そんな、今さらダメよ。あと3日で大会なのよ。なのに、ルーカスが持ってるゲームの半分もやったことがない」(1枚目の写真)。「彼を見てみろ。もう終わったんだ」。「コーリー、あんた、何て意気地(いくじ)なしなの。もし、あたしのこと好きだったとしても、もう終わり。サイテーね」。「僕に、好きになって欲しかった?」。「もう違うわ〔Not anymore〕」。「そりゃいい」。コーリーは、ジミーまで放っておいて、ヘイリーから去って行き、ジミーは一瞬1人ぼっちになる(2枚目の写真)。しかし、ジミーが、「コーリー、僕 やめたくない」と言うと、コーリーとヘイリーが両側から駆け寄り、ジミーの決断を賞賛する(3枚目の写真)。
  
  
  

パットナムの悪辣ぶりを示す2つ目のシーン。最初に仕掛けたのは、サム。パットナムが乗った車がバックしてくるのを見ると、猛然と車をぶつける(1枚目の写真、矢印はぶつかる方向)。お陰でパットナムの乗用車の後部はかなり破壊されるが、走行できないほどではない。次は、バックしてくるパットナムの車に、Uターンしたサムのピックアップが正面からぶつかる。ここで、壊れたのはなぜかピックアップ。もちろん乗用車も大破したが、エンジンをやられたピックアップは動かなくなる。パットナムは、「言ったろ。邪魔するなって!」と嘲るように笑うと(2枚目の写真)、そのまま先に進んでいった〔何でボロいピックアップ〕。
  
  

ジミーたち3人を乗せた別のピックアップは、とうとうリノの街に到着する。最初は、ジミーだけが荷台から立ち上がり、運転席の上に手を置いて、夜の賑やかなリノを眺めている。通りの真ん中に掲げられた大きなアーケード式の電飾〔レノ・アーチと呼ばれる1926年に作られた歴史的建造物〕には、大きく「リノ」とピンクの光文字で書かれ、その下に、ヘイリーが言った言葉が「世界一大きな小さな街〔THE BIGGEST LITTLE CITY IN THE WORLD〕」が書かれている(1枚目の写真)〔この愛称は、レノ・アーチを市の “門” にするため、スローガンを100ドル(=210円/現在の約35万円)で募り、1929年に決定され、アーチを飾ることになった〕。ジミーは、「コーリー」と呼ぶ。すると、ヘイリーも顔を出し、3人で華やかな街並みを見つめる。コーリー:「じゃあ、ここに住んでるんだ」(2枚目の写真)。ヘイリー:「魅力的だと思わない?」。さらに、「いいこと、あと3日ですべてのゲームを彼に学ばせるのよ」と言い出す〔この言葉は、『あと3日で大会なのよ』との前言と食い違う。前言を言ってから少なくとも半日は経っているし、前に書いたようにリノから会場までは直線距離で615キロなので、行くのに半日はかかる。リノで3日も練習に費やす余裕などないはず〕。ヘイリーが目指したのは、大量の25セントコインの入手〔それがないと、ジミーが練習用に多様なゲーム機を使えない〕。そこで、ヘイリーは父の友人のスパンキーという気のいいトラック野郎を連れてきて、自分の代わりにクラップスで賭けさせる。ヘイリーには、母直伝の直感があり、10ドルを元手に400ドルに増やす〔最後は、ヘイリーの指令でスパンキーが一方的に稼ぐので、カジノからつまみ出される〕。ヘイリーは、お礼として、元手の10ドルをスパンキーに渡しただけ(3枚目の写真、矢印は10ドル札)。それでも、気のいいスパンキーは、「10ドル?」と言っただけ。
  
  
  

次にヘイリーがしたことは、任天堂のゲーム相談室に電話をかけ、ゲームの攻略法を質問すること。そして、コーリーはヘイリーがメモったことをジミーに伝えるのが役目(1枚目の写真)。ジミーはそれぞれのゲームのポイントを確実にマスターしていく(2枚目の写真)。練習に使用するマシンはどんどん替わり、ヘイリーの質問対象のゲームもどんどん増えていく(3枚目の写真)〔ゲームメーカーは任天堂だけでないはずだが、他はどうするのだろう?〕。一方、パットナムはベイトマン夫人クリスティーンに旅先から電話をかけ、捜索が手間取っている詫びを言い、ついでに、元夫のサムが “とんでもない人間” だというのを言い忘れていたことを責め、最後に、子供たちがビデオ・ゲームをしながら州の中を動いていると報告する。その時、同じ店にサムとニックが現われたので、パットナムは3度目で最悪の悪辣ぶりを発揮。2人が食事をしている間に、ピックアップをレッカー車で廃車場に持って行かせたのだ。一方、サムは、そのレストランの中で、コーリーのキャップをかぶっている不良を発見し、ニックが入手先を尋ねると、「脳たりんから巻き上げた」と答えたので、それを聞いたサムが、コーリーのことを言われたと思い、「何だと?」と威嚇する。不良は、ガキどもに借りを返させたと、説明した。「子供たちはどこに行った」と訊かれ、知らないと答える。それを教えたのは、たまたまその食堂にいたルーカスで、ロスのビデオ・ゲーム大会の記事を見せる。2人が外に出ると、ピックアップは運び去られた後だった。
  
  
  

一方、コーリーたちは、ゲーム機のあるホテルの芝生の上で、ドリンクを飲みながら作戦を練っている。ヘイリー:「97のゲームのうち72が終わり、うち3つはまだ練習しないと。だからまだ、28残ってる〔97-72+3=28〕」。「あと1日で?」。その頃、パットナムは、「ベイトマン夫人、ルーカスっていうスノッブのガキから、彼等がロスのビデオ・ゲーム大会を目指しているという情報をつかみました」と報告している〔最大の謎は、このあとパットナムがリノの街に行きジミーを探し回ること。ロスに行くと分かったなら、もっと手前で南下してロスに直行すべきなのに、なぜリノまで行き、さらに、そこにいると思って捜したのだろう? 大会が迫っているので、専用の車を持たない3人は、とっくにロスに向かっていると判断するのが普通ではないのか?〕。パットナムは、ホテル内で探し回るうち、プールサイドのドリンク店でコーリーを見つける(1枚目の写真)〔このシーンのために、パットナムをリノに寄らせた〕。ここで、コーリーは、自分達がプロに追跡されていたことを初めて知る。横にいた女性が、「その子ならゲーム機のそこにいたわよ」と余計なことを言うので、パットナムはコーリーを放り出して、ジミーの方に向かう。コーリーはヘイリーに大声で助けを求め、2人で後を追う。ゲーム機の場所に先に着いたパットナムは、ジミーを抱えて連れて行こうとする(2枚目の写真)。それを見たヘイリーは、甲高い悲鳴を上げ、「あの男が胸に触った!」とパットマムを指差す(3枚目の写真)。パットナムがジミーを抱えていたこともあり、駆けつけた警備員2名により、直ちに連行される。
  
  
  

3人は、タクシーに飛び乗ると、ヘイリーの “家” に直行する。しかし、そこはリノ市内のちゃんとした家ではなく、何もない郊外の荒地の真ん中にポツンと置いてあるトレーラーハウスだった。話が違うので、コーリーは、「いったいここはどこなんだ?」と訊く。「あたしの家よ」。一方、廃車場で解体されかかっていたサムのピックアップは、何とか走れるようになった。ヘイリーがトレーラーハウスの屋根の上に敷かれた人工芝の上のガーデンチェアに座っていると、そこにコーリーが登ってきて、横に座る。「君って、いつも、屋根の上で座ってるの?」。「中にいるよりいいでしょ。『とっても素敵なおうちに住んでる』なんて言っちゃったけど、しつこくなじらないで〔don't be rubbing it in〕」。「僕、何も言ってないよ」。「あたしのせいじゃない。パパのでもない。ママよ。問題を抱えてた。だから、あたしもクラップスを覚えた。パパは明日の夜、仕事から戻ってくる。ロスから電話をかけるつもりだった。『ねえ、パパ、何だと思う。あたしたち、家が買えるのよ』ってね。バカみたいでしょ?」。コーリーは、ヘイリーにキスしようとし、突き飛ばされる。「何する気? 二度としないで。ありえないわ。男の子とキスするなんて!」。「女の子となら?」。「この、知ったかぶり」。そう言うと、ヘイリーはコーリーの胸ぐらを乱暴につかんで引き寄せると、思い切り口にキスする。キスし終わった後の2人のぎこちない感じが面白い(1枚目の写真)。一方、パットナムは、リノ市内の電話番号案内で、ブルックスという人物の家の住所を訊く〔ヘイリーの姓がブルックスということが分かるのは、映画の中で、この時が初めて。パットナムは、①なぜ、ヘイリーの姓がブルックスだと知ったのか? ②なぜ、彼女の家がリノ市内にあると知ったのか?〕。翌朝、コーリーがジミーを呼びに行くと、どこにもいない。決して手放さない黄色のランチ・ボックスが残っているので、変だと思う。窓の外から、「コーリー」という叫び声が聞こえてくる。ジミーはパットナムに拉致され、車に放り込まれるところだった。コーリーは、「やめろ! ジミー!」と叫んで走るが、とても間に合わない(2枚目の写真)〔このシーンのために、ヘイリーの姓がブルックスだと分からせた〕。それを見たヘイリーは、最後の手段に訴える。父の友人達に電話をかけ、赤い半壊車の阻止を頼むことにしたのだ。トラック無線を聞いたトラック野郎達が、パットナムの車を挟み撃ちにしようと迫る。後ろから2台と前から2台。そこは、片側2車線の道なので、大型トラック2台が並行してくると 完全な “通せんぼ” となり、しかも、両側は山を切った崖なので 逃げ場がない。パットナムは急ブレーキを踏み、トラック2台の前で真横になって止まる(3枚目の写真)。今度は、背後から2台がやってきて完全に取り囲まれる。パットナムは、スパンキーらに殴られ、ジミーを奪われた。
  
  
  

スパンキーは、ヘイリーのトレーラーハウスまで戻ると、ヘイリーとコーリーを乗せて一路ロスに向かう。ヘイリーは、「ねえ、スパンキー、もっと早く」と頼むが、スパンキーは、「ピート親爺のトラックを盗んだって気付かれたら、えらいことになる。その上、速度違反の切符まで切らせる気か?」と反論。しかし、ジミーが、「お願い、スパンキー」と頼むと、「分かった」と言って頑張ってくれる(1枚目の写真)。トラックは、無事ユニバーサル・スタジオの入口に到着。降りる時、ジミーは、「バイ、スパンキー」と笑顔を見せる(2枚目の写真)。受付終了までほとんど時間がないので、3人は手をつないで走る。会場は、スパルタカス広場〔2013年に取り壊された〕の中央の建物。入口には、「ビデオ・アルマゲドン〔大決戦〕」という横断幕が掲げられている。3人は、何とか間に合って受付に駆け込む(3枚目の写真)。ヘイリーの関心は、どんなゲームで争うかということ。『ニンジャガイデン〔忍者龍剣伝、テクモ〕』(1988)と聞き、ホッとする。ジミーの背番号は「427」。
  
  
  

第何ラウンドかの競技はもう始まっていて、そこで最高点を出したのは169番、ルーカスだった。その直後に行われた最終ラウンドにジミーは出場する。制限時間は10分。全員が一列に並んでゲームと格闘する(1枚目の写真、下部が切れているが、ジミーが手にコントローラーを持っている)。画面は変わり、ユニバーサル・スタジオにパットナムが現れる。会場では、残り時間が10秒を切り、カウントダウンが始まる。そして、3人の最終挑戦者が発表される。169番のルーカス、255番のモラ、427番のジミーの3人だ(2枚目の写真、ジミーの横にあるのは黄色のランチ・ボックス)。これで、ルーカスは、初めてジミーを強力なライバルと見なす。司会の男性は、①3人の競技者による対戦は15分後、そして、②サプライズとして、使用するゲームは、誰もやったことのない新しいゲーム、だと発言する。これは、ヘイリーにはショックだった。今までジミーを苦労して鍛えてきたことが、すべて無駄になってしまう。一方、スタジオ内を歩いていたパットナムは、ベイトマンに声をかけられ、衝撃を受ける。横には、ベイトマン夫人もいる。クリスティーンは、「パットナムさん、息子が路上生活を始めてもう9日よ」と、如何にパットナムが役立たずかを指摘する(3枚目の写真)。「数時間で戻すって言ったじゃないの」。「ここまで来て下すってありがとうございます。彼はここにいます」。しかし、これでは、たとえ見つけても、報酬は減額だろう。
  
  
  

わずか15分後に決戦だというのに、コーリーたちは会場から外に出る。ルーカスも、階段の一番上まで出てくるが、そこでパットナムの姿を見つけ、非常に卑怯な手を思いつく。そして、「おい、あんた、黒シャツの人。こっちを見ろ。階段の上だ」とパットナムに声をかける。「ここだ、僕だ」。そして、階段の下にいるジミー達を指し、「彼等なら下にいるぞ」と教える(1枚目の写真、矢印は卑劣なルーカス)。ヘイリーは、真っ先にパットナムに気付き、コーリーが率先して逃げ出す。コーリーは、ちょうど出発間際だったスタジオのツアー車両に乗り込む。動き出した車両にパットナムが飛び移る。それを見た3人は、前の車両に行こうと、既に座っている乗客のイスの上を這い進む形で車両の前方に進む。前方の車両とは、細い連結棒でつながっているが、そこを最初に渡ったのはコーリー(2枚目の写真)。ジミーとヘイリーが後に続く。そうこうしている間に、ツアー車両はイベントハウスの中に入って行く。中では、キングコングが火を吐いていたりする。車両が止まったので、コーリーたちは車両から降りてハウス内に逃げる(3枚目の写真)。パットナムもすぐに後を追う。
  
  
  

一方、会場では、ビデオ・アルマゲドンの開始まで残り2分とのアナウンスが流れる(1枚目の写真、矢印はタイマーだが、こちらは “2分” ではなく、残り1分を指している)。舞台の右端に立っているのは、してやったりという顔のルーカスと、あまり強くなさそうなモラの2人。スポットライトを浴びているのは司会者。司会者は、「1人目の競技者は、ネバダ州のルーカス・バートン君」と紹介する。アナウンスは「90秒」。コーリー達は、なぜか、大会の舞台の真上にいた〔実際には、ツアー車両の入ったイベントハウスと、スパルタカス広場とはかなり離れているので、こんなことはありえないのだが、映画の進行上、これしかジミーが大会に出場できる可能性はないので、目をつむるしかないであろう…〕。「2人目の競技者は、カリフォルニア州の素敵なモラ・グリッサムさん」。アナウンスは「60秒」。舞台の上では、3人が業務用エレベーターを見つけて乗り込み、パットナムの追跡をかわす(2枚目の写真、矢印は降下方向)。アナウンスは「40秒」。「そして、3人目の競技者は、偉大なユタ州の…」。「30秒」。「ジミー、ジミー、ジミー・ウッズ〔旧姓〕」。しかし、ジミーの姿はない。「19、18、17…」と数字は減っていく〔変なことに、この時点ではタイマーの数字とアナウンスは合っている〕。時間がゼロになったので、司会が、「ビデオ・アルマゲドンの始まりだ!」と言うと、舞台の背後にあった “未来的な銀色の飾り壁” が上昇し始める。すると、その、その中央には、黄色のランチ・ボックスを持ったジミーが誇らしげに立っていた(3枚目の写真、矢印は上昇していく飾り壁)。ジミーの劇的な登場に司会者も大喜び。「3人の競技者が揃いました。挑戦するのは、『スーパーマリオブラザーズ3〔任天堂〕!』〔日本での発売は、1988年10月23日だが、北米での発売は1990年2月12日〕
  
  
  

3人の競技者の前に、それぞれ大型の画面が並び、一斉にゲームがスタートする(1枚目の写真)。制限時間は、予選と同じ10分。コーリーが声援を送っていると、そこにサムとニックが現れる。「ファイナリストじゃないか! なぜ教えなかった?」。ここから、2人もジミーの声援に加わる。この時点で、ルーカス16900点、ジミー17200点(2枚目の写真)、モラ14900点。しかし、ジミーは途中でやられてしまい、ワールド2の最初に逆戻り。他の2人はワールド2を終えるが、ジミーはまたやられて、ワールド2の最初に2回目の逆戻り。とても勝ち目はないように見えたが、ジミーはスターを見つけて一気にワールド3に進む。この時点で、ルーカス59280点、ジミー52000点、モラ39820点とルーカスに肉薄。ジミーは残り数秒で再びスターを見つけ、一気に加速し(3枚目の写真)、81520点で優勝。
  
  
  

一家は喜びに湧く(1枚目の写真)。コーリーが喜びのあまり叫んでいると(2枚目の写真)、その姿を見たジミーがすごく満足そうな顔になる(3枚目の写真)。ジミーの笑顔は、ヘイリーにも向けられる。
  
  
  

画面は変わり、2台の車が寂れた道を走っている。先頭の乗用車は、ベイトマンが運転し、クリスティーンが助手席に座り、後部座席には、ランチ・ボックスを握りしめたジミーが座っている。2台目のピックアックには、狭い運転席に、サム、ヘイリー、ニック、コーリーの順に座っている。ジミーの座っている側の窓に、野原の中に立っているティラノサウルスとブロントサウルスが見えてくる。これは、クロード・ベルがパーム・スプリングスの西のレストランWheel Innのために作った恐竜で、ブロントサウルスは46 m、1975年の完成、ティラノサウルスは20m、1986年の完成だ〔1996年以降、製作者の死で所有権が変わり、カバゾン・ダイナソーと呼ばれるようになった〕〔この場所はユニバーサル・スタジオの東南東145キロ→サムがここまでヘイリーを乗せてきたということは、しばらくの間、リノに連れ帰るつもりはないことを意味する(方向が全く違う)〕。恐竜を見たジミーは、「カリフォルニア!」と、体を揺すりながら大きな声を出す(1枚目の写真)。冷血動物の夫は うるさがるだけだが、クリスティーンは、かりそめにも自分が産んだ子なので、「路肩に寄せて」と夫に頼む。ジミーは外に出ようと必死だ。車が恐竜の脇で止まると、ジミーは、ドアを開けて走り出す(2枚目の写真、矢印はジミーのランチ・ボックス)。ピックアップはより前方で止まり、コーリーがジミーを追って飛び出す。結局、全員がジミーの後を追う。ジミーが向かったのは、ブロントサウルスのしっぽに設けられた入口。中に入ったジミーは、階段を駆け上がる(3枚目の写真)。
  
  
  

階段を上がった所には、小さな販売所もあるが、誰もいない。コーリーが着いた時には、ジミーの姿もない。コーリーは、「ちょっと待ってて」と言うと(1枚目の写真)、正面のカーテンを開けて中に入る。そこは、ブロントサウルスの首につながる立入禁止の場所で、少し先にジミーが座り、ランチ・ボックスを開けて 中を見ている。コーリーは横に座り、ジミーが手に持っていた写真を見る(2枚目の写真、矢印)。それは、クリスティーンがまだサムの夫だった頃、この場所に来て、ジミー、ジェニファー、コーリー、ニックの一家6人で、ティラノサウルスの脚の上に座って撮った記念写真だった(3枚目の写真)。
  
  
  

ジミーは、コーリーに向かって、「ジェニファー」と言う。コーリーは、写真を指して、「ジミー、これが “カリフォルニア” か?」と訊く。ジミーは頷く。「お前、ジェニファーが幸せだった場所に、これを残しておきたかったのか?」(1枚目の写真)。ジミーはまた頷き(2枚目の写真)、ボックスをそっと閉じる。コーリー:「そして、さよならを言いたかった」。ジミーはボックスを横にそっと置く。サムが「ジミー」と呼ぶと、ジミーは、ベイトマン夫妻の間に立っているサムに抱きつく(3枚目の写真)。それを見たクリスティーンは、「なぜ、私達の子を家まで連れて行かないの? 町に着いたら話し合いましょ」と言い、去って行く〔ジミーの親権をサムに譲るのであろう〕。カーテンの向こう側には、ジミーのランチ・ボックスが残されていた。
  
  
  

サムのピックアップの運転席に5人は乗れないので、子供達3人は荷台に乗る。真ん中に座ったヘイリーは、まず、ジミーの頬にキスをする(1枚目の写真)。それが済むと、次がコーリーの頬(2枚目の写真)。最後に、ジミーがヘイリーの頬にキスをする(3枚目の写真)。ここで流れるサリー・ドワーズキーが、この映画のために作った曲『I found my way』の最後の部分を紹介しよう。「説明できない愛の力で、彼は、新たに進む道を 私に教えてくれた。明日との境に立ち、昨日を後ろに残し、近づく朝日で、過去の影は消えていく。明日は、全く違う日になるだろう。私は、自分の道を見つけたから」。明らかに、ジミーの将来を暗示している。
  
  
  

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